はじめてのキスに強烈に憧れたのは、先日紹介した漫画『めぞん一刻』のアニメがきっかけでした。
小学生の私が惹かれたシーンは、初キスの場面でもなんでもなかったのですが、その絵になるシーンが好きで、ちょっとした夢でした。
そんな、子どもの頃の叶わなかった夢を語っていきたいと思います。
キスをするためのちょっとしたテクニック
そのシーンは、主人公・五代裕作のガールフレンドである七尾こずえが五代の気持ちを確かめるためにとった行動でした。
こずえは両手を広げ、五代の顔に少しだけ近づきます。
こずえは背が小さかったため、五代は少しかがむ姿勢となりました。
その状態のままこずえは五代に「目をつむって」と言い、広げた両手で油断している彼の顔を包んでキスをします。
この不意打ちの作戦に子どもながらに感心し、いつか好きな相手にやってみたいと思っていました。
しかし、これには問題があり、相手が素直に目をつむってくれないとできないのです。
実際、五代もこれを好きな相手にやってみようとしましたが、相手は目をつむってくれず、失敗に終わりました。
騙されやすい素直な人でないとこの方法は成功しないのです。
小学生だった時の私はそれに気付かず、友達にやってみて初めてその盲点に気付きました。
X(Twitter)で流行ったキスの構図
それから何十年も経ち、そんな憧れもすっかり忘れ去った頃に、Xで「キスの構図」というものが流行りました。好きなキスのシチュエーションを構図にしたイラストをアップするというものです。
Xに次々と「キスの構図」が上げられていくなかで、それらの多くがかつて私が少女漫画の中で見たキスだと気づいたのです。
少女漫画は女の子に夢を与えるものであるため、見せ場であるキスシーンには、特に力を入れると聞いたことがあります。
女の子を壁にやり、腕を使って逃げられないようにする「壁ドン」や女の子の顎を持ち上げる「顎クイ」といったテクニックは、キスとの合わせ技でよく見られます。動きのある絵なので構図的には確かにインパクトが強いです。
また、人気のあるキスの構図が、現実では難しいタイプのキスの仕方であることも重要です。私の周りでは「実際やられたら寒すぎる」という意見が多く、あくまで漫画やドラマだからこそ良いのだと言います。フィクションだからこそロマンがあり、だからこそ少女たちは憧れを抱くのかもしれません。
叶わなくても憧れる夢
はじめてのキスへの夢はいわば子供の頃の夢であり、叶わないとより強く記憶に残ります。
子どもの頃の“やってみたい”は、特にその憧れが大きいように思えます。
特撮モノが好きな少年がヒーローに憧れるように、恋愛漫画が好きだった私が特別なシチュエーションに憧れるのは自然なことでした。
『めぞん一刻』のキスは叶わないままでしたが、美しき幼い頃の夢として、今も私の心に残っています。夢によっては、叶わないほうがいい場合もあるのかもしれません。