今回紹介するのは、『めぞん一刻』に引き続き、高橋留美子の原作漫画『らんま1/2』です。
不運な身体と恋と格闘と……
本作は、水を被ると女になってしまう呪いを受けた早乙女乱馬が数々の強敵を倒しながら、呪いを解こうと奮起する物語です。両想いだけど、なかなかくっつかない許嫁の天道あかねとのラブストーリーも見どころとなった格闘ラブコメディとなっています。
80年代後半の古い作品ですが、2024年3月に『高橋留美子原画集 COLORS 1978-2024』が発売されたことから、当時読んでいた人の中には、懐かしさで読み返している人もいるのではないでしょうか。
水を被ると女になるトリッキーな設定
主人公・早乙女乱馬とその父・早乙女玄馬は修行のために、中国へ行った際に「呪泉郷」というたくさんの泉が湧き出た修行場にたどり着きます。修行中に2人は泉に落ち、とんでもない呪いにかかり、乱馬の体は女、玄馬はパンダへとなってしまいます。
「呪泉郷」は、かつてそれぞれの泉で様々な生きものが溺れ死んだという伝説があり、泉に落ちたものは溺れた生き物になる呪いがかけられてしまうのです。呪いがかかった人間は、水を被ると呪いの生き者に変身し、お湯を被ると元に戻る身体になります。
本作では、早乙女親子の他にも呪泉郷に落ちた者が複数登場し、多くは乱馬のライバルとして登場しては、物語を引っ掻き回します。
ただの格闘バトルに終わらないこの設定ですが、バトル漫画によく見られる特殊能力とは少し違います。呪泉郷の呪いはあくまで落ちた人間の体を別のものにするだけで、それ以外は特になにも変わりません。
乱馬自体が無差別格闘流の格闘家であるため、登場するライバルたちも格闘家です。格闘新体操や格闘スケートなど「格闘○○」と呼ばれる格闘技が登場し、さまざまな闘いが繰り広げられます。
格闘シーンはあくまで格闘技の試合のように描かれ、命を賭けた血みどろな争いとは無縁。スポーツ感覚でバトルが描かれているため、女性でも気軽に読める格闘漫画となっています。
好きだからこそ素直になれない
以前に紹介した『めぞん一刻』では、お互い両思いなのに、主人公とヒロインの関係がなかなか進みませんでした。『らんま1/2』も同じように、素直じゃない性格から主人公・乱馬とヒロイン・天道あかねは、想い合っているはずなのに憎まれ口を叩きます。
「親同士が勝手に決めた許嫁」「あかねの家に居候している」「同じ高校で同じクラス」「共に格闘家」と、こんな状態の男女が互いを意識しないはずがないでしょう。
なにかにつけて挑発したり、口論したりしていますが“喧嘩するほど仲がいい”という言葉通り、喧嘩自体がコミュニケーションとなっています。それなのに、異性が相手に近づくと嫉妬をむき出しにして怒るため、周囲には気持ちがバレバレです。
乱馬もあかねも本来は優しい性格。クラスメイトや仲間たちには、癇癪を起こすことも少ないです。唯一怒って見せるのが乱馬・あかねという点が、本命相手であることを物語っています。
2人にはそれぞれ何人もの恋のライバルが現れますが、思われる側は眼中にありません。乱馬の場合、ハーレム状態が築かれているものの、あかねに対する一途な気持ちが描かれているため読んでいて安心ができます。
進展しない関係にやきもきしつつも、最後はハッピーエンドを迎える本作は少年向けとはいいながら、オトナ女子でも楽しめる作品です。
※B6判の電子版はなし。
電子版の全巻セットをお求めの場合はコチラ。
※新装版はB6判よりも巻数は多いです。