今回紹介するのは、20年もの間、たった1人の幼なじみに片思いする女性を描いた漫画『こいいじ』です。
主人公・大原忠実は、生まれた時からずっと一緒だった幼なじみ・赤井聡太がずっと好きで、諦めきれずにいます。いつまでもしがみつく、彼女の“恋意地”を『放浪息子』で名を馳せた志村貴子が描きます。
終わらない片思い
大原忠実(以下、まめ)は中学生の時に片思い相手だった・赤井聡太に告白するも振られます。やがて、高校生になってからも思いは変わらず、聡太に彼女がいるにも関わらず、再び告白。聡太からは「ありがとう」と言われてしまう始末です。
しかし、まめが成人した頃、聡太は高校時代の彼女と別れていました。そして、迎える成人式。まめは、聡太に呼び出されます。
思わず期待するまめ。しかし、聡太の口から出た言葉は「子供ができたから結婚する」。まめの恋は完全に終わりを告げるのです。
ところが、聡太の妻・春子は娘の優を生んでしばらくして亡くなります。やもめとなった聡太に、まめはいけないと思いながらも可能性を感じてしまうのです。
本来であれば結婚の報告を聞いた時点で終わった恋であったのに、ずっと引き続けるまめの恋。告白し、振られたにも関わらず終わりが見えないというのは、非常に厄介な片思いです。しかし、20年という年月は伊達ではありません。亡くなった春子と同じくまめも聡太のことを深く愛していました。
片思いから始まる恋愛漫画は数多く存在していますが、まめのように人生の大半を片思いに費やすヒロインは珍しいかもしれません。まめの恋は不毛に思える部分もありますが、だからこそ応援したくなってしまいます。
片思いはまめだけではない
聡太を諦めようと実家を出て一人暮らしをした矢先、まめの家の面倒を見てくれた不動産屋の河田が登場します。河田はバツイチで、離婚してからはずっと独り身の人でした。
心機一転新生活を始めようとしていたところに舞い込んできた新たな出会い。少しずつ惹かれつつあった河田は、まめの20年の片思いを知りながらも自分の気持ちを伝え、まめのほうもそれを受け入れます。
けれども、2人の前に立ちはだあるのがまめの片思いです。20年分の気持ちは簡単に消し去れるものでなく、まめの心の中にはしぶとく聡太への気持ちが残っていました。
本作の登場キャラクターそれぞれが報われない恋をしています。好きな人が別の好きな人だった。理解はできても心が拒否する、まめの姿を見ると恋愛の難しさを考えてしまいます。
まめの恋がどんな結末を迎えるのか。ぜひ、読んで見届けてください。